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患者数を報告した文書。発行前日の数も入れており、最新情報の発信に努めたことが見て取れる(氷上郷土史研究会古文書部会提供)
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患者数を報告した文書。発行前日の数も入れており、最新情報の発信に努めたことが見て取れる(氷上郷土史研究会古文書部会提供)
下張り文書のはがし作業に取り組む氷上郷土史研究会古文書部会のメンバーら=2018年5月、円通寺(同部会提供)
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下張り文書のはがし作業に取り組む氷上郷土史研究会古文書部会のメンバーら=2018年5月、円通寺(同部会提供)
西宮、明石、姫路、洲本など瀬戸内海沿岸に感染が広がっていることを示す文書(氷上郷土史研究会古文書部会提供)
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西宮、明石、姫路、洲本など瀬戸内海沿岸に感染が広がっていることを示す文書(氷上郷土史研究会古文書部会提供)

 感染すればあっけなく死んでしまうことから、幕末以来、「ころり」と呼ばれて恐れられたコレラ。明治初期の流行に際し、兵庫県が予防法や感染地域などを報告した文書が、同県丹波市氷上町御油の円通寺で発見された。新型コロナウイルスがはびこる今と共通する記述も多く、140年以上前の人たちも未知の疫病と懸命に闘っていた跡がにじむ。(藤森恵一郎)

 同寺にある古いふすまなどを解体し、下張り文書を調べている氷上郷土史研究会の古文書部会(山内順子代表)が昨年5月、びょうぶの裏面から見つけた。

 まだ、ドイツの医師コッホがコレラ菌を発見していない1877(明治10)年、コレラ流行の渦中に県などが発行した23枚。

 21枚は、県が9月下旬から10月中旬にかけて区長や医療関係者らに出した「兵庫県検疫委員報告」で、第2、3、6、7、8号が残っていた。他に、お雇い外国人のドイツ人医師ベルツが紹介する治療法を別紙にて報告するという内務省衛生局の短い文書が1枚、売買禁止物を知らせる兵庫県令(現知事)の森岡昌純の布達が1枚あった。

 「その毒を受くると雖(いえど)も、自己に於(おい)て、コレラ病を発することなく、却(かえっ)て、他人にその毒を伝ふることあり」

 「予防法の最も切実なるものは、コレラ流行時に、先(ま)ず、一国の人民を他国の人民と、全く交通せざらしむるにあり」

 第2号で、公立神戸病院(現・神戸大学医学部付属病院)が病状や予防などの方法を具体的に紹介している。

 無症状の感染者が他人に伝染させる危険性、感染拡大を防ぐための国境封鎖の必要性…。現在の新型コロナ流行下の注意喚起かと見まがうような記述が並ぶ。

 治療については「真性コレラとなるに至(いたり)ては、これに施用(しよう)する特効薬あることなし」というように絶望的だった。

 しかし、「尚、阿片(あへん)を与えて腸の蠕動(ぜんどう)機を鎮静し、充血を滅却すべし」「大渇(のどの乾き)あるものには当水与ふるより、寧(むし)ろ炭酸含有水或は炭酸含有酒を与ふるを優れり」などと、医療の最前線で得た経験と知識を動員し、事細かに記している。当時の医療者たちもワクチンも特効薬もない中、懸命の治療に当たっていたことがうかがえる。

 第6号には県が感染流行地を連ねている。西宮、尼崎、有馬、明石、飾磨、姫路、赤穂、高砂、洲本、家島…。神戸港を中心に瀬戸内海沿岸に感染が広がっていたようだ。

 第8号では、ミカンや柿、ナツメ、ザクロなどを食べると「多く該病を発するの禍あり」とし、港では売買が禁止されていると報告。しかし「全管に及し候ては、事実、差支(さしつかえ)の場合もこれあるべきを以て、遷延(せんえん)、今日に及べり」と、全域での禁止には支障もあって実行できず、疫病が長引いている旨を記している。これも、感染防止と社会経済活動との両立に苦心する現状と重なる。

 翌1878年、神戸には日本初の検疫施設の一つとして、和田岬消毒所(現神戸検疫所)が開設された。文書の調査に当たった同部会代表の山内さんは「感染症拡大があぶり出した社会の弱点を克服することで、先人たちは新たな社会を構築した」と指摘する。「令和2年の感染症との闘いも早く終わり、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方や教育への契機になれば」と願った。

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