丹波

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山あいの自宅作業場で、竹に漆を塗り込む星梵竹さん=丹波篠山市
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山あいの自宅作業場で、竹に漆を塗り込む星梵竹さん=丹波篠山市

 東日本大震災で自宅を津波に流され、楽器も道具も全て失った尺八奏者・製作者の星梵竹(本名・星之規)さん(66)が、昨年6月に兵庫県丹波篠山市に移住し、自宅兼工房で尺八作りを再開している。友人らの助けで道具を取り戻し、「尺八に命を吹き込まないといけない」と山村に音色を響かせる。

 星さんは京都市生まれ。高校卒業後に体一つでアメリカ大陸へ渡り、ヒッチハイクや自転車で大陸を横断した。その道中、カナダ・バンクーバーの路上で尺八を吹く日本人男性に出会った。「静かな中に魂のこもった音」。ロックやジャズしか知らなかった星さんは引き込まれた。

 帰国後に尺八を習い始め、1976年には製管師の玉井竹仙さんに弟子入りし、作る側の修行も始めた。以来、注文を受けて尺八を作りながら国内外を演奏して回り、2000年~08年は出会いの地であるカナダで活動した。09年に再び帰国し、「海の見える場所」を求めて11年から宮城県南三陸町に移住。そこで震災に遭った。

 地震は車で外出中に起こった。自宅は海に近く、被害の大きかった志津川地区。山を越えた場所にある知人宅に避難した。途中、「稲光のようなゴロゴロという音がした」。津波の音だった。停電のためテレビを見ることができず、当時は南三陸町の惨状を何も知らなかった。数日後に戻った自宅は土台だけを残し、全てが流されていた。

 「2階の仕事場に楽器も道具も置いていて、何もかも失った」。避難所生活の後、両親の実家などに身を置いたが、「あーあ、としか言えない気持ち」だった。だが聞きつけた友人や兄弟弟子らが道具や竹材をかき集めて送ってくれた。当初は再スタートなんて思いつきもしなかったが、次第に「作らんといかん」と考えるようになった。同年末、限られた材料を使って被災後1本目の尺八を完成させた。

 生きているからには作り続けようと、大阪、和歌山などに移り住みながら活動した。そして昨年6月、妻の実家である神戸に近く、自然豊かで静かな環境を探して、丹波篠山市にたどり着いた。仕事場からは山が見え、とても静か。竹を切り、穴を空け、音の微妙な違いに耳を傾けながら、「命を吹き込みたい」と願って筒の内側に漆を塗り込んでいく。

 移住から半年が経過したが、星さん夫婦は地域の行事に誘われてはみそ造りなどで交流を深めている。震災から9年。「東北に帰りたい気持ちもあるが、丹波篠山の温かさに救われている。ここで落ち着いて暮らせたら」。

 星さんは、地元の人たちに尺八を身近に感じてもらおうと、水道管を加工した練習用尺八の教室も企画している。童謡や唱歌の演奏を目標に、生徒が集まり次第、開始予定。(金 慶順)

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