但馬

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丁寧に酒母を混ぜる杜氏の勝原誠さん=此の友酒造
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丁寧に酒母を混ぜる杜氏の勝原誠さん=此の友酒造
仕込みを終えた酒の出来具合を確認する岡本英樹社長=文太郎
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仕込みを終えた酒の出来具合を確認する岡本英樹社長=文太郎
明治期の大火でも残った蔵の前で日本酒の魅力を語る中易裕明社長=出石酒造
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明治期の大火でも残った蔵の前で日本酒の魅力を語る中易裕明社長=出石酒造
蔵に備えた「成分分析室」で開発に取り組む杜氏の向井久仁子さん=向井酒造
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蔵に備えた「成分分析室」で開発に取り組む杜氏の向井久仁子さん=向井酒造
神戸新聞NEXT
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 兵庫県但馬ゆかりの酒蔵を紹介する「たじま酒蔵新聞」の2回目。但馬のほかに丹後半島の京都府伊根町にも足を延ばし、但馬流の酒造りを継承する杜氏らの思いを伝える。(竜門和諒・小日向務・末吉佳希)

■朝来・此の友酒造 風土と職人の勘 歴史紡ぎ

 蔵の井戸からくみ上げる粟鹿山の軟水。兵庫県産の山田錦や五百万石。恵まれた環境と職人の勘が歴史を紡いできた。江戸時代中期の1690(元禄3)年創業。330年前に建てられた木造蔵で、杜氏の勝原誠さん(46)らが酒造りに向き合う。

 20歳で入社した勝原さんは、夜な夜なシュワシュワと音を立てて発酵する様子に「お酒は生き物なんだ」とくぎ付けになった。29歳の若さで杜氏に就任。当初から目標にしてきた全国新酒鑑評会では代表銘柄「但馬」が6年前から連続で金賞に輝いている。

 2016年には屋号を冠した新銘柄「加古屋」を打ち出し、中国や英国など海外でも販売している。「日本酒を飲んだことのない女性に1合飲んでもらう努力が必要」とフルーティーな味わいを意識した純米吟醸酒も醸造。ラベルをピンクにするなどポップなイメージで、新たな消費者の掘り起こしも狙う。

 17年からは“幻の酒米”とも呼ばれる「但馬強力」の栽培にも関わり、商品化を実現。「地域に根ざした酒造りを目指し続ける」と意気込む。此の友酒造TEL079・676・3035

■新温泉・文太郎 兵庫北錦の産地に蔵復活

 酒米・兵庫北錦の産地で、水にも恵まれ、多くの但馬杜氏が輩出してきた新温泉町。「酒蔵だけがなかった」。京都府京丹後市にあった永雄酒蔵を移転し、昨年2月、同町では約60年ぶりに本格的な酒造を始めた岡本英樹社長(69)が振り返る。

 前町長の岡本社長に酒造りの経験はない。そこで同町在住のベテラン杜氏2人、「現代の名工」にも選ばれた田村豊和さん(84)と、森口隆夫さん(77)を招いた。

 昨季は試験的に醸造。初めてフルシーズンの酒造りとなった今季は、猛暑などの影響で酒米の出来がもうひとつだった。米を見た2人の杜氏は「固い」と表情をこわばらせ、すぐに対応を始めたという。「水への漬け方も昨季と変えていて驚いた。経験は重要。酒造りは人だとつくづく感じた」と岡本社長。同社では当初から研修を受け入れ、技術継承にも力を入れる。

 社名は同町出身の登山家加藤文太郎にあやかった。販路拡大などの課題はあるというが、岡本社長は「満足のいく酒ができている。酒蔵を復活させてよかった」と話している。文太郎TEL0796・80・2830

■豊岡・出石酒造 若者への発信にも力注ぐ

 城下町の大半は1876(明治9)年の大火で焼けたが、土壁の酒蔵は奇跡的に焼け残った。かつて住み込みで働いた蔵人たちが食事し、今は販売所となった板の間に、14代目の中易裕明社長(46)が腰を下ろし、観光客に歴史を伝える。

 江戸時代中期の1708(宝永5)年、造り酒屋「門垣屋」として創業。1943(昭和18)年に周辺の酒蔵が合流し、出石酒造として発足した。平成初期に醸造拠点を移す「集約製造」に切り替えたが、すすで黒ずんだ蔵の中で瓶詰めやラベル貼り作業を続ける。

 すっきりとした味わいでふくよかな香りのある「楽々鶴」の銘柄は、日本酒の別名「ササの露」と、江戸期に酒を献上していた出石藩主の別荘「楽々園」に由来し、「お酒を楽しんで」との思いを込める。

 若者にもっと日本酒に親しんでもらおうと、近年は日本酒を使ったスイーツ開発や蔵での音楽イベントなどにも力を注ぐ。「和食にも洋食にも合う日本酒の魅力や歴史を、時代に合った方法で伝えたい。どの家庭にも一升瓶があった時代が再びやってくるはず」と信じている。出石酒造TEL0796・52・2222

■京都府伊根・向井酒造 但馬流継ぎ丹後で造る味

 「日本で海に一番近い」と呼ばれる酒蔵。1階が船庫、2階が住居という独特の構造の建物「舟屋」が並ぶ漁村で、江戸中期の1754(宝暦4)年に創業した。杜氏の向井久仁子さん(44)は但馬杜氏だ。

 蔵の長女として生まれた。先代社長の父義昶さんから「東京農業大の醸造学科へ行け」と指示され、いや応なく進学。そこで自分と同じように蔵を継承する友人と出会い、積み重ねた研究の日々が「自分の酒を造りたい」と駆り立てた。

 大学を卒業し、地元に戻った1年後に杜氏を任されることに。蔵と古い付き合いのある但馬杜氏がいる岡山県などの蔵を訪れ、酒造りを学んだ。

 蔵に備えた「成分分析室」で味の基本(甘味、酸味、辛味など)の加減を重ね、バリエーション豊かな酒を生み出す。地元で生産された赤米(古代米)で醸す「伊根満開」はロゼワインのような桜色で、甘酸っぱさが広がる味わい。昨年大阪で開かれたG20サミットで提供され、伊根の名を世界に知らしめた。「但馬流で仕込んだ酒は素朴な味に仕上がり、料理への親和性が高い」と話す。向井酒造TEL0772・32・0003

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