但馬

  • 印刷
こうじの出来具合を確かめる杜氏の松本幸也さん=香住鶴
拡大
こうじの出来具合を確かめる杜氏の松本幸也さん=香住鶴
蒸した酒米を急いでタンクへ運ぶ杜氏の高橋慶次さん=田治米
拡大
蒸した酒米を急いでタンクへ運ぶ杜氏の高橋慶次さん=田治米
酒米を仕込む5代目蔵元の安木淳一郎さん=銀海酒造
拡大
酒米を仕込む5代目蔵元の安木淳一郎さん=銀海酒造
唯一の外国人杜氏として酒造りを究めるフィリップ・ハーパーさん=木下酒造
拡大
唯一の外国人杜氏として酒造りを究めるフィリップ・ハーパーさん=木下酒造
神戸新聞NEXT
拡大
神戸新聞NEXT

 「但馬杜氏のふるさと」でも、日本酒造りが最盛期を迎えている。兵庫県但馬の各蔵や、但馬とゆかりの深い丹後の酒蔵を訪ね、2回にわたって紹介する。(金海隆至、竜門和諒、桑名良典、末吉佳希)

■香美・香住鶴 “海の幸”引き立て役に

 こくのあるうま味に、キレのあるのど越し。「理想とする酒造りに極端な味や香りはいらない」。醸造部長で杜氏の松本幸也さん(48)は力を込める。海の幸を引き立てる地酒として、確たる味と口当たりを追い求めてきた。

 江戸時代中期の1725(亨保10)年、名刹大乗寺(香美町香住区森)の門前町で創業。江戸後期の絵師円山応挙の門弟らが京都を離れて寺のふすま絵を制作した際は、その酒でなぐさめたとも伝わる。

 清流矢田川の水に、但馬産の五百万石や兵庫北錦などの酒米を使う。全量を伝統的な生酛、山廃造りで仕込む全国でも数少ない酒蔵だ。

 こうじの温度管理や水分調整、約1カ月の手間暇をかける酒母造り…。蔵人7人を束ねる松本さんは、毎年の酒造りの詳細なデータを記録に残す。経験に五感を働かせて担う重責だが「成功も失敗も多くを経験して初めて、違った状況に対応できる」と話す。

 社是は「但馬の誇りたれ」。吟醸や純米などの特定名称酒ではない普通酒が出荷量の約7割という所に、庶民に愛されるゆえんがある。香住鶴TEL0796・36・0029

■朝来・田治米 “山の幸”との相性抜群

 蒸し上がった米を、蔵人が走ってタンクへ運ぶ。厳密に計算された温度を保つため、冷気に触れる時間を一秒でも減らすためだ。「酒造りは自然が相手。常に謙虚に」。湯気の中をのぞく杜氏の高橋慶次さん(42)の表情は真剣だ。

 1702(元禄15)年創業。和泉国(現在の大阪府南西部)出身の先祖が円山川上流の清流「竹の川」の水を使って醸した「竹泉」の銘柄を今も守る。

 高度成長期には一部の製造工程を機械化したが、毎年違う米の味を最大限生かそうと、2012年に完全手作りへと回帰した。19代目の田治米博貴社長(49)は「その年に合った酒造りを追求する蔵人の魂を感じてほしい」と話す。

 生酒を除くすべての酒を2年以上寝かせ、まろやかさと深みを引き出す。16年からは長期熟成させた古酒にビンテージラベルを貼って差別化を図る。

 「料理をおいしくする掛け算のお酒。山菜や肉など地元の“山の幸”との相性は抜群」と自信を見せる。「100人が一杯飲むのではなく、3人が100杯飲む酒を」。根強いファンに伝統の味を届け続ける。田治米TEL079・676・2033

■養父・銀海酒造 ものづくりの伝統継承

 自らの手で、蒸した酒米の微妙な温度を感じ取る。「数値化されたデジタルの世界ではなく、作り手の感性が問われる」。5代目蔵元の安木淳一郎さん(57)が、自ら杜氏として、夫婦で酒造りを続ける。

 県内最高峰・氷ノ山の麓で1897(明治30)年に創業した。豊岡市出石地域の農家が自然農法で栽培する酒米・山田錦を使用。蔵には、そこにしかすみ着かない酵母菌があり、「関宮でしか造ることができない酒がある。ものづくりの伝統は継承したい」と、奥行きの深い酒を目指す。

 その一方で「飲まれる日本酒」をと、ここ5年でブランドを見直した。デザイナーと対話を重ね、キリリとした辛口の中にも奥行きがある純米吟醸「稜線」や、繊細で伸びやかな味わいの純米酒「KATSURA(カツラ)」を発売。山並みを表現したデザインやずんぐりむっくりのボトルなど個性があふれる。

 蔵に足を運んでもらっての瓶詰め体験や、城崎温泉街で但馬の酒蔵の試飲会を開くなどのアイデアを仲間と練る。「但馬の酒造りを地元や若い人に知ってほしい」。銀海酒造TEL079・667・2403

■京都府京丹後・木下酒造 和を尊ぶ英国出身の杜氏

 江戸時代末期の1842(天保13)年創業。どっしりとした飲み口から超甘口まで、味わいのバリエーションの多さが人気を集める銘酒「玉川」を手掛けるのは、日本で唯一の外国人杜氏、英国出身のフィリップ・ハーパーさん(53)だ。

 名門オックスフォード大で独文学を専攻し、1988年に英語教師として来日。大阪市内の高校に勤め、友人と居酒屋へ通ううちに日本酒に魅了された。奈良県葛城市の梅乃宿酒造に蔵人として入り、酒造りを但馬杜氏の故石原鉄男氏に学ぶ。2007年から木下酒造で杜氏を務めている。

 両翼を広げるコウノトリの絵柄が浮かぶ「コウノトリラベル」は生酛純米と純米吟醸の2種類。但馬で「コウノトリ育む農法」を用いて無農薬栽培される酒米・五百万石を使い、蔵つき酵母で醸す。売り上げの一部はコウノトリの野生復帰事業に役立ててもらうため、豊岡市に寄付している。

 酒造りは一人ではかなわず、作り手たちの信頼が欠けていてもなしえない-。厳しくも優しかった但馬杜氏の師匠はそれを「蔵人の和」と呼んだ。ハーパーさんもまた、仲間に語り継ぐ。木下酒造TEL0772・82・0071

但馬の最新
もっと見る

天気(5月26日)

  • 24℃
  • ---℃
  • 60%

  • 25℃
  • ---℃
  • 50%

  • 26℃
  • ---℃
  • 60%

  • 26℃
  • ---℃
  • 60%

お知らせ