針が千本もないのに「ハリセンボン」、図鑑の説明文で「まずい」と書かれる「セミホウボウ」-。そんな「残念」な海の生き物たちを集めた企画展が、兵庫県豊岡市瀬戸の城崎マリンワールドで開かれている。小さな水槽に集めた魚など8種類のほか、大きな魚や海獣などをパネルで解説。人間たちに笑われながらも水槽を自由に泳ぎ回る魚や動物たちがいとおしくなるかも-。来年1月下旬まで。(石川 翠)
クリッとした目と小さな口がかわいいハリセンボンは、威嚇するために体中の針を逆立てることから名付けられたが、数えてみると300~400本しかなかったという。パネルには、とぼけた表情のイラストに吹き出しで「フグ(の仲間)だけどサバよんじゃいました」-。
食用のホウボウに見た目が似ていることから命名された「セミホウボウ」は、足びらで砂の上をトントンたたきながら進む愛らしい姿の魚だが、専門図鑑の特徴説明文には「まずい」と記載。「美味」と記載される種類はあるが、わざわざ「まずい」と書かれるのは珍しいという。
イトヒキテンジクダイは、雄の口の中で卵をふ化させる。水槽をのぞき込んだ小学3年の女児(9)=大阪市=は「お母さんならいいけど、お父さんの口の中はちょっと…」と苦笑い。
「人気の本『ざんねんないきもの事典』とコラボしていないのが残念」と話すのは、意地悪な企画を考えた飼育員の出石司さん(39)。その真意は「残念なのはあくまで人間の価値観。海で生き抜くための能力を知ってもらいたかったから」という。
スペース外では「ゴマフアザラシの雌のポコ」という「残念な個体」も紹介。思いを寄せる雄が餌に夢中になる時を狙って後ろから静かに近づき、ひれをそっと腰元に当てたり、後頭部にキスしたりするが、気付かれると怒られるという。残念というよりもかわいいこのしぐさは、1日2回の餌やりタイムに見ることができる。
城崎マリンワールドTEL0796・28・2300
