但馬

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コウノトリ野生復帰事業で初めて野外で巣立った巣塔の前で振り返る羽賀正老さん=豊岡市百合地
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コウノトリ野生復帰事業で初めて野外で巣立った巣塔の前で振り返る羽賀正老さん=豊岡市百合地
秋篠宮ご夫妻のテープカットで放鳥される第1号のコウノトリ=2005年9月24日、コウノトリの郷公園
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秋篠宮ご夫妻のテープカットで放鳥される第1号のコウノトリ=2005年9月24日、コウノトリの郷公園
コウノトリの世話をする松島興治郎さん=2001年4月18日、コウノトリの郷公園
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コウノトリの世話をする松島興治郎さん=2001年4月18日、コウノトリの郷公園
神戸新聞NEXT
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 2005(平成17)年9月、コウノトリの郷公園(兵庫県豊岡市祥雲寺)で、野生復帰事業として初の放鳥が行われた。秋篠宮ご夫妻のテープカットで木箱から現れた1羽は力強く大空へ羽ばたき、ゆっくり旋回した。羽賀正老さん(80)=同市=は人だかりの中から見つめていた。

 かつてコウノトリが絶滅した大きな要因は農薬の大量使用とされた。国内の野生の群れが絶滅したのは1971年。最後の1羽が拠点にしたのは同市百合地の人工巣塔だった。羽賀さんも農薬を散布した。

 85年に旧ソ連から6羽が贈られ、同市野上の飼育場で育てた。89(平成元)年5月、初めてひなが誕生した。

 ポコッ。小さな音とともに卵の殻が割れ、灰色の産毛に包まれたひなが転がり出た。モニターにはりつき、固唾をのんで見守っていた飼育員の松島興治郎さん(77)=同市=は胸をなで下ろした。

 65年に始まった復帰事業に当初から携わり、ただ1人の専属飼育員として心身を削って世話に明け暮れた。「四半世紀待ちわびた瞬間だった」とかみしめた。

 兵庫県は99(同11)年、野生復帰の拠点となる「コウノトリの郷公園」を開園。同市百合地で羽賀さんが所有する農道には初の放鳥の翌2006(同18)年、新たな巣塔が建てられた。その頃には農薬に頼らない「コウノトリ育む農法」が広まり始めていた。間もなく巣塔にはペアがすみ着いた。

 羽賀さんは様子をつづった瓦版を地区内で発行。産卵、ふ化と続いた。折りたたみ椅子を持参し、朝から晩まで観察した。

 07(同19)年7月末。放鳥したコウノトリが育てたひなが初めて巣立つ瞬間を見ようと、多くの人が巣塔を見守っていた。羽賀さんが疲れてうつむいた瞬間、歓声で顔を上げると、巣から足が離れていた。

 瓦版の号外にはこう記した。「ひなが一日も早く成鳥となることを祈ります。やがて百合地の巣塔に里帰りしてくれることを期待しながら」

 コウノトリが暮らせるのは人間にとっても豊かな環境。「子や孫の世代の社会が豊かな環境になってほしい」。次代への思いをコウノトリに託す。(石川 翠)

■メモ

 コウノトリ野生復帰 国の特別天然記念物のコウノトリは、農薬の使用など環境の変化から1971年、国内で最後の野生の群れが絶滅。豊岡市内の飼育場では産卵してもふ化しない状態が続いたが、85年に旧ソ連から6羽を譲り受け、4年後に初めて繁殖に成功した。2005年に初の放鳥、07年に46年ぶりの巣立ち。17年には国内の野外のコウノトリが100羽を突破し、現在は140羽を超えている。

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