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外国人向けのコミュニケーション・ワークショップを笑顔で指導する本田千恵子さん(左)=2019年8月、兵庫県小野市
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外国人向けのコミュニケーション・ワークショップを笑顔で指導する本田千恵子さん(左)=2019年8月、兵庫県小野市

 新たな感染拡大防止のため「新しい生活様式」に注目が集まり、在宅ワークの継続などネット越しのコミュニケーションが浸透しつつある。自宅にいながらのやり取りは便利で安全だが、相手が目の前にいないことには落ち着かなさもある。身体を伴わない、遠隔でのコミュニケーションに必要なことは何か。身体表現を生業(なりわい)とする俳優の本田千恵子さん(県立ピッコロ劇団)は「想像力」の重要性を挙げる。(溝田幸弘)

 本田さんは俳優のほか大学で演劇を教え、演劇の手法を生かしたコミュニケーション・ワークショップ(WS)の講師としても活動している。

 新型コロナウイルスの感染拡大で、本田さんも生活が一変した。演出助手を務めた4月の劇団公演は直前で中止に。大学もオンラインでの指導を余儀なくされ、授業や会議には連日テレビ会議アプリ「Zoom(ズーム)」を使う。

 目下の懸念は、学生との距離の取り方だ。教室なら、学生を見ればその日の状態が分かる。沈んでいたら「大丈夫?」と軽く声をかけて気持ちをほぐせる。

 今は、画面上に同じ大きさで映る学生がずらりと並び、教室とは勝手が違う。例えば「出席」しなくなる子がいたら、オンラインでどうフォローするのかなど考えるべきことは多い。

 「学校の授業も演劇も、みんなで同じ空間を共有してやってきた。今はネットでつながっていても、肉体は個々の場所に存在する。どうすればみんなを心豊かにできるのか」。自問しつつ、想像力と演劇の力が持つ可能性に解決の糸口を探る。

■発信と受信

 各地の学校や職場で開くコミュニケーションWSでは「互いにどれだけ理解し合えるか」を大切にする。「舞台は俳優一人では成立しない。自らを発信するだけでなく、受信することを大事にしてもらえるよう意識している」。そこで共演者や観客など他者に対する想像力が重要になる。

 プログラムの一つを体験した。2人が向かい合わせに立ち、1メートルほどの細い棒の端に互いの人さし指を当て、挟んで支える。

 「相手に何も言わず、棒を落とさないように動いてください」と本田さん。自分が手を引っ込めれば相手は突き出す。相手がしゃがんだら自分もしゃがむ。

 息を合わせないと棒はすぐ落ちる。相手はどうしようとしているのか、自分の意図は伝わったのか-。「伝えたつもりではダメで、大切なのは相手に達したかどうか。私は『伝達』と言っていますが、相手を意識しないとできない」

■刺激し引き出す

 このように細かなコミュニケーションを積み重ねる作業は、遠隔では難しいかもしれない。「それでも、想像力を刺激することはできる」と本田さんは強調する。「例えば『目の前に梅干しがありますよ、触って』って呼びかける。するとみんなの口に唾液がたまり出す。そんなふうに、それぞれの空間や身体でやれることを引っ張り出すような声かけができれば」

 最後に、本田さんは5年ほど前のエピソードを明かした。

 「学生たちに、今なら授業だって全部ネット上でできるんじゃないかって冗談半分で聞いたことがある。すると全員が嫌だと答えた。一人で授業を受けるのは嫌だ、みんなで集まる時間は失いたくない、と」

 先が見えない中、落ち着かないのは誰もが同じだが、「特に大学では教員以上に学生が不安なはず。とにかくやんなきゃ」と本田さん。「これまでの経験をオンラインにどう変換できるか。模索するのが面白くなってきた」と笑った。

【ほんだ・ちえこ】1968年、東京都出身。98年、県立ピッコロ劇団入団。甲南女子大、大阪芸術大などで指導する。

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