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武道家としても知られる内田樹氏。学生時代、三島の「憂国」を読んだのをきっかけに空手を始めたという=神戸市東灘区
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武道家としても知られる内田樹氏。学生時代、三島の「憂国」を読んだのをきっかけに空手を始めたという=神戸市東灘区

 戦後文学を代表する作家の一人で右翼思想家の三島由紀夫と新左翼学生たちとの公開討論会が1969年5月、東大駒場キャンパスで開かれた。ドキュメンタリー映画「三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実」は、東京のテレビ局が保管していた当日の映像によって、会場の熱気を伝える。解説者の一人として登場する思想家の内田樹(たつる)氏(神戸市在住)は「学生を本気で説得しようとした三島の言葉の力を確かめてほしい」と話す。(井原尚基)

 同年1月、封鎖していた安田講堂が陥落し、全共闘運動はピークを越えていたが、討論会には千人を超える学生らが集まった。70年に東大へ入学する内田氏は当時、浪人生。「水と油ほど考えが違う両者がなぜ」と、討論会が成立したこと自体に驚き、やりとりを詳報する書籍が発売されると、むさぼるように読んだという。

 会場で、全共闘側は「自分と他人」「認識と行動」「時間と空間」「天皇制」といった論点を掲げ、時に挑発的に三島を論破しようと試みる。それに対し三島は終始、誠実で上機嫌な態度を貫いた。内田氏は「三島にとって、学生を論破するのは赤子の手をひねるくらい簡単なことだった」というが「雄弁術を自制し、胆力とユーモア、包容力がある男だと印象づけることにこそ気を使っていた」とみる。

 民兵組織「楯(たて)の会」を率いていた三島。自衛隊の一部とともにクーデターを起こすことを本気で考え、東大生の一部をその仲間に引き入れようとしていたのではないか-というのが、内田氏の見立てだ。

 「体を張って国家権力と戦ってきた何人かの学生を、立場を超えてリクルートできると信じていたのだろう」と内田氏。映画では、討論会の後で三島から「楯の会」に入ることを誘われたことを打ち明けた元学生も登場する。

 「20歳そこそこの学生の言葉にほとんど生活実感、身体実感が感じられず、まったくの空語だった」と内田氏が語る討論。しかし、画面から伝わってくる熱量は圧倒的だ。

 あの日から半世紀。「三島と何人かの学生は、自分の主義主張に殉じて死ぬ気があった。そんな時代があったこととともに、自分の主張を貫いて投獄される覚悟がある人すら皆無な現代日本の軟弱さに気がついてほしい」

     ◇

 「三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実」はシネ・リーブル神戸(TEL078・334・2126)で上映中。

【三島由紀夫】1925年、東京生まれ。代表する小説に「仮面の告白」「金閣寺」など。ノーベル文学賞候補にもなった。70年、自衛隊市ケ谷駐屯地(現・防衛省本省)で隊員にクーデターを促し、割腹自殺した。

【全共闘(全学共闘会議)】1960年代後半、全国で起こった大学紛争で無党派の学生らがつくった。反戦や大学解体などのスローガンを掲げ、次第に新左翼の党派が力を握るようになった。

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