西播

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地元の木材を使って建てられた多目的ホール。3月、最後の卒業式が開かれた=越知谷小学校(撮影・小林良多)
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地元の木材を使って建てられた多目的ホール。3月、最後の卒業式が開かれた=越知谷小学校(撮影・小林良多)

■木造校舎は地域の誇り

 兵庫県神河町中心部から北へ約10キロ。標高約千メートルの千ケ峰に抱かれた農村に、市川水系の清流が注ぐ。越知谷小学校(神河町越知)はそんな自然の中で、約120年の校史を刻んできた。

 神河町域は約8割を山林が占める。中でも旧越知谷村は「木材王国」で、昭和20年代の最盛期には製材所が11社稼働。良質なスギを全国各地に送り出した。

 児童数の推移は林業の盛衰と軌を一にした。明治期創立の越知谷尋常小学校は戦後、第一小に改称され、分教場が第二小として独立。ピークは1948(昭和23)年の計376人。木材の需要が国産から輸入材に移りゆく中、子どもの数も下降線をたどり始めた。

 2005年の再統合を前に一大事業が動く。老朽化した木造校舎の建て替え。既に児童数は100人を切っていた。「合併前の駆け込みか」とやゆされる中、旧神崎町教育長の山田征男さん(76)らは「越知谷らしさを守る」ことにこだわった。地元の木材を使い、地元の大工が建てる-。村の威信をかけ、同小OBら地元の大工約30人で「匠の会」が結成された。

 03年1月、隣の空き地を丸太が埋めた。住民が切り出したスギで、実にトラック100台分。「立派な木がそろって壮観でな。そりゃ、立派な校舎にせんと」。ベテラン大工の前川光義さん(75)の腕も鳴った。

 主役は角材より難度の高い丸太。校門からの回廊に玄関、62メートルの長い廊下…。40本以上の柱をあえてむき出しで組んだ。多目的ホールの吹き抜けには滑らかなアーチが架かる。全ては「木のぬくもりを感じてもらうため」。前例のない工法も果敢に取り入れた。

 04年2月の竣工(しゅんこう)後、児童は約半年間、ぬか袋を手に登校。ぞうきんがけの代わりに、ぬかの油で床や柱を磨くためだ。住民らが廃材でこしらえたプランターも並ぶ。父が製材、小学生の次女と長男が丸太の皮むきと親子3代で関わった大工の横田辰雄さん(56)には「みんなで作りあげた」手応えが、確かに残る。

 児童はスギを伐採した森を歩き、植樹もした。生きた教材から郷里の魅力を学ぶ。越知谷の誇りが詰まった合掌造りに見て触れて、都市部からの山村留学生も多く巣立った。

 在校生11人はこれから約8キロ離れた神崎小に通う。空き校舎の活用策は未定だが、建築寿命は柱に使ったスギの樹齢80~100年に匹敵する。まだあと半世紀以上。林業のまちのシンボルは、これからも古里とともにある。(井上太郎)

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 少子化の影響で、中西播地域では今春、三つの小学校(佐用町2校、神河町1校)が閉校した。長く地域に根ざし、住民に親しまれた学びやの記録を刻みたい。

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