三田

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お堂のある広場で続く「火渡り」。今も県内各地から参拝者が訪れる=五大力菩薩堂
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お堂のある広場で続く「火渡り」。今も県内各地から参拝者が訪れる=五大力菩薩堂
五大力さんが描かれたヒノキの板=五大力菩薩堂
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五大力さんが描かれたヒノキの板=五大力菩薩堂
挿絵・岩本芳子さん
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挿絵・岩本芳子さん
挿絵・岩本芳子さん
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挿絵・岩本芳子さん

 五大力さんは確かにいた-。現在祭られているのは、三田市消防本部(兵庫県三田市上深田)の西側に見えるお堂だ。「五大力菩薩堂」。石の玉垣に囲まれ、ヒノキ板に色鮮やかな5体が描かれていた。ハスの花の上に座る菩薩を中心に、左右に首飾りや宝冠であしらった4体。手には、槍や鈴などの密教法具を掲げる。絵は雨風で古びてしまいそうだが、どうもきれいだ。一体誰が?

 「1年に1回、仏具の販売会社に作り直してもらってるんです」。教えてくれたのは、常福寺(上深田)の篠原基成住職。お堂は同寺の境外で、明治初期にはあったとされる。五大力さんを信仰する人々でつくる「五大力講員」が管理し、今も信者が千人ほどいるという。戦争中には出征する兵士らの名簿が市内各地から持ち寄られ、安全祈願したという。

 地域に愛され続け、今も毎月13日に月例祭を開催。健康や長寿などを願って護摩を囲んで読経する。2月と9月には大祭が催され、民話で語り継がれる「火渡り」も健在だ。

 子どもの頃から毎年参加している男性(74)=三田市=は高校で野球に励む孫が甲子園に出場できるよう祈願したという。「ほんまに行ったわ。こら実力か!?」とうれしそう。

 孫は地元野球チーム「三田ボーイズ」出身で立命館宇治高3年の上田龍一郎さん。初戦では決勝点をたたき出す活躍を見せた。

 五大力さんの力は計り知れない。(山脇未菜美)

   ◇   ◇

■三田の民話「深田の五大力さん」

 深田の五大力さんは田んぼの中に祭られる。普通の神さまや仏さまと違って社はなく、高さ1・2メートル、幅30センチ、厚さ6センチの板に黒、黄、緑色の絵の具で描かれる。

 ある年の2月13日、その日は五大力さんの春の大祭。近くの村に体の弱い若者が住んでいて、病で寝込む日が多いため、心配した母親が息子を連れてお参りした。

 ほら貝を「ブオー」と吹き鳴らし、紫や黄色の衣をまとった山伏が経を唱える中、白い煙をあげて大護摩が燃え上がった。お参りしている人たちが煙を追いかけ、若者も体いっぱいに浴びた。

 続いて火渡りが始まり、裸足で炭の上を渡る。若者も必死で加わった。すると、風邪一つひかない強い体になったということだ。

 ある時は、灘の造り酒屋がよい酒ができないので、悩みながら、あちこちで祈願をしていた。

 深田村で白い煙が森の方から立ち昇っていた。「何の煙だろう」と近づくと、五大力さんで大護摩がたかれていたのだった。

 煙を体いっぱいに浴びて帰ろうとしたとき、北風とともに雪が舞ってきた。少しも寒くない。すがすがしく家に着くと、酒蔵から良い酒の匂いが漂った。飲んでみると「おいしい!」。それからというもの、その造り酒屋では味も香りもよい酒ができるようになった。

 この五大力さんは力の強い菩薩さまで、祈祷札を玄関などに貼り付けておくと、襲い来る悪魔や病気を払ってくれるとも言われる。

(三田市「三田の民話100選」から。挿絵は岩本芳子さん)

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