三田

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藪の中に隠れた岩肌。かつて石割場だったという=三田市宮脇
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藪の中に隠れた岩肌。かつて石割場だったという=三田市宮脇
宮脇の丘陵地に沿って藪が続く。走る車のやや左側の藪が石割場跡=三田市宮脇
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宮脇の丘陵地に沿って藪が続く。走る車のやや左側の藪が石割場跡=三田市宮脇
挿絵・岩本芳子さん
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挿絵・岩本芳子さん
挿絵・岩本芳子さん
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挿絵・岩本芳子さん

 「うーん、宮脇の石割場ねえ…」。兵庫県三田市の男性職員が首をかしげた。

 宮脇は川筋から土地が高くなっていく段丘地だ。岩は少なく、古代から採石の記録は見られないという。

 しかも「須磨田に至る」という川沿いの県道脇はどこも藪ばかり。苦戦していると、先祖代々暮らす男性(82)が教えてくれた。「子どもの頃は機械の音がやかましかったなあ」

 石割場は確かに県道脇の藪の一角にあり、昭和30年ごろまで砂利道などの石を採っていたという。戦後、周辺に住宅地が広がるまではタヌキも出たらしい。

 茂みをかき分けると、藪の斜面に高さ10メートルほどの岩肌がくっきりと見えた。その上には民家が建ち、約40年前に嫁いできた女性(64)もこう話した。「ここは石割場だった岩の上で地盤が固い。だから地震にも強いと、亡くなった主人に聞かされました」

 やはりあったのだ。「宮脇村」の誕生は江戸時代とされ、民話は集落の発展に貢献した石割場、そして大工の存在を語り継ぐためにできたのかもしれない。

 大入道に化けたタヌキを相手に、たばこを吸いつつ弱みを探り、苦手な煙を浴びせて懲らしめる。いかにも大工を束ねた棟梁らしい度胸と知性だ。ただ、そんなに嫌煙家のタヌキがいたとは…。いたずら者とはいえ、少しかわいそうな気もした。(安藤文暁)

   ◇   ◇

■三田の民話「忠兵衛藪の大入道」

 宮脇から須磨田へ行く道沿いに、石を切り出す石割場があり、そばに忠兵衛藪があった。辺りでは満月の夜に大入道が出ると言われ、みんな恐れていた。

 この話を聞いた大工の棟梁。「どうせタヌキかキツネの仕業だろう。ようし」と満月を待った。

 ある家の棟上げの日、祝いの食事や酒をよばれ、いい気持ちで家路についた。ふと、満月に気付いて身構えた。「今夜は出るぞ」

 石割場まで来ると、藪の太い竹がガサガサ…。現れたのは、三つ目の大入道だ。「やいっ、わしは忠兵衛藪の大入道だ」

 「お前さんが大入道か」。棟梁は大きな割石の上に腰かけ、長いキセルを取りだした。火打ち石で火を付け、うまそうにゆっくりと吸う。そして「おまえさんも吸うか」とキセルを差しだしてみた。

 すると、「たばこは苦手じゃ。煙を吸うと力がぬける」と言う。棟梁はいいことを思い付いた。

 「おまえさん、身丈は七尺七寸(約2メートル90センチ)ぐらいかのう」。そう聞くと、「そうじゃな。もっと大きくなれるんじゃ。が、大きくなりすぎると力がなくなる」

 そこで棟梁は一押し。「この目で見んと信じられん」。得意気になって九尺九寸(約3メートル80センチ)まで伸びた大入道に、口いっぱいに吸った煙を吹きつけた。大入道はしぼんでタヌキに戻り、金づちを投げつけると藪へ逃げこんだ。

 それからというもの、大入道は出なくなったとさ。(三田市「三田の民話100選」から。挿絵は岩本芳子さん)

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