三田

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教室を卒業した永野萌衣さん(左)と、瀬戸ひかりさん。永野さんは「今まで支えてくださった方に恩返しができるように頑張ります」と誓った=その田卓研
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教室を卒業した永野萌衣さん(左)と、瀬戸ひかりさん。永野さんは「今まで支えてくださった方に恩返しができるように頑張ります」と誓った=その田卓研

 「『お願いします』や『ありがとうございました』を言う。相手を尊敬する気持ちがスポーツに必要なことだと思いました」

 3月8日夜、その田卓研の門下生2人の卒業式。埼玉県の名門、正智深谷高校に進学を決めた永野萌衣さん(15)=有馬中出身=が涙をこぼして声を振り絞った。卓球が人生で一番楽しいと思えたこと、最後の中学総体では全国ベスト32に入れたこと…。教室での6年間を作文にして、代表の園田八朗さん、保護者、後輩たち20人に読んだ。

 2人は感謝と礼儀を学ばせてもらったと繰り返した。終戦直前に生まれ、ご飯を食べられるか分からない毎日を送った園田さんに、口酸っぱく伝えられてきた。「物があって助けてくれる人がおって、初めて卓球ができるねん」

    ◇

 人見知りで人と話すのが苦手だった永野さん。小学4年で母美智子さん(41)に「習い事は何がしたい?」と聞かれ、母がしていた卓球と即答した。入門当時は声が小さくて自分の意見を言えず、園田さんに「何で声が出えへんのや」と注意され続けた。最初の1年間は試合に出ても初戦や2回戦で負け、コートでよく泣いた。

 小学5年のとき、後藤杯選手権ホープスの部(小学6年以下)で県予選2位になり、初の本選へ。少しずつ自信を持って声を出せるようになり、声は自分を盛り上げる手段と捉えられるようになった。中学3年になる頃には、年少選手たちのまとめ役とお姉さん役を任された。

 今日も練習できる事を喜びとし 両親を始め全ての人全ての物に感謝して 他の人を愛しみ物を大切にして練習に励みます

 教室では毎日、壁に掲げられた垂れ幕の言葉を読み上げてから練習を始めた。最初は上級生をまねてやっていたが、中学で強い選手と戦うと重みを感じた。試合でボールを渡すと「ありがとうございます」と返ってきたり、勝っても負けても相手の目を見てあいさつしたり…。「気持ちよく試合ができる人は、人として尊敬できるなって思った」

    ◇

 今、あの子はどないしとるんやろか? 園田さんはふと、卒業生を思い出す。教え子の多くが教室に顔を出すけれど、姿を見せない子もいる。「途中で卓球を辞めるのも人生」としつつ、社会人になって「おかげで何事にもくじけず仕事ができています」と近況を報告してくれる。卓球を通じて立派な大人になってくれるのが、何よりうれしい。

 卒業式の後、巣立つ2人とその家族、コーチら9人ですし店を訪れた。座敷で机を囲み、刺身や巻きずしを味わった。「かっこいい」。若い2人が韓国のアイドルグループの話に夢中になるそばで、園田さんらが卓球談義で盛り上がる。

 お開きが近くなった頃、日本酒を飲んで上機嫌の園田さんは両手に拳をつくり、試合でいつも応援席から選手を鼓舞するように、声に力を込めた。「頑張れよ、踏ん張れよ。ほんでまた帰ってきてな」(山脇未菜美)

=おわり=

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