三田

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サーブ練習では一球一球に集中。時々、力強く床を踏み込む「ドン」と音が響く=その田卓研
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サーブ練習では一球一球に集中。時々、力強く床を踏み込む「ドン」と音が響く=その田卓研
門下生に打球を繰り出す井之上善紀さん=その田卓研
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門下生に打球を繰り出す井之上善紀さん=その田卓研

 コーチの井之上善紀さん(40)=兵庫県三田市=が繰り出す高速の球に、門下生が食らいつく。100本連続でドライブやバックハンドを返球し、汗はびっしょり。隣で他の子どもがペアで打ち合いをしていると、井之上さんが叫んだ。「気を抜かない!」。壁には「常在戦場」の横断幕。常に戦う心を持ち続けろ-と緊張感を持って接する。

 「今の時代、楽しく取り組む教室もあるけど、高校、大学と上に行くほど厳しい。この年齢から場慣れすれば、折れない心も身に付くし社会に出て役に立つ」。リオデジャネイロ五輪男子で銅メダルを獲得した水谷隼選手(29)も指導した井之上さんは語る。

 現在コーチは2人。スマッシュで試合を組み立てる攻撃スタイルの「ドライブマン」を井之上さん、三田学園中高や実業団で活躍した岡田恭治さん(61)=同市=が、球に下回転をかけて相手のミスを誘う「カットマン」を教える。

    ◇

 井之上さんは小学5年から5年間、その田卓研に通った。専修大学では全日本選手権男子ダブルスで優勝し、実業団の東京アートに入団。まだまだこれからという矢先、持病の腰が悪化。なんで自分が…。多くの治療を試して粘ったが、若い選手の台頭もあって23歳で引退した。

 けがで辞めたことは誰にも知られたくない-と、卓球とは無関係の静岡県の一般企業へ就職。が、名門高校で監督を務める妻の父親から指導を依頼された。断り切れずにコーチを始めると、学生たちの熱量に動かされた。中学1年だった水谷選手の相手を頼まれたのもこの頃。球の扱いのうまさを目の当たりにし、夢を手伝いたいと思った。

 その田卓研では、8年前から月数回教える。地元に戻って訪れた教室で代表の園田八朗さん(78)に懇願された。「ドライブマンを教えるコーチが辞めるんや」。仕事も家庭もある。でも、自身の礎を築いてくれた教室を何とかしたい、と引き受けた。

    ◇

 「何でそんな動きになるの?」。練習中、バックハンドで速い球を返せない西山小5年金丸陽君(10)に井之上さんが聞くと、うつむいた。「角度が違うでしょ」。手を握って教えると「はい…」。声が小さかったため、もう一度返事をさせた。できない理由は何度も質問する。自身の言葉で考えてもらうためだ。

 最近の子どもは意見を言えなかったり、注意すると落ち込んだりする子が多い。それでも必ず人は成長する、と確信する。

 「ふりが遅かったから腕に力を入れる」「手首を曲げて打っていた」-。金丸君が毎日記す卓球ノートには、良かった点や悪かった点などが鉛筆でたどたどしく書かれている。通い始めた頃はもじもじしていたが、練習やノートを通して少しずつハキハキしてきた。

 5月、全日本選手権ホープス(小学6年生以下)の県予選で8位に入賞、全国への切符を手にした。「これも訓練。上達するのが見えたらもっと伸びる」。きりっとした井之上さんの頬が緩んだ。(山脇未菜美)

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