神戸

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神戸ワイン城のオープニング式典の様子(1984年)
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神戸ワイン城のオープニング式典の様子(1984年)
しょうゆ倉庫でオープンした「ぶどう果樹研究所」=神戸市西区櫨谷町(神戸みのりの公社提供)
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しょうゆ倉庫でオープンした「ぶどう果樹研究所」=神戸市西区櫨谷町(神戸みのりの公社提供)

 「神戸ビーフに合うワインを作りたい」。第13代神戸市長、宮崎辰雄(故人)の発案によって立ち上がったワイン事業。1975年には神戸市西区に初のワイン用ブドウ生産組合が誕生した。

 「ワイン造りの先例地に学べ」

 宮崎の指示を受け、市の農政局(現・経済観光局農政部)員らは国内外の先例地に足を運んだ。

 78年8月、自治体のワイン造りの先駆者である北海道・池田町を調査。フランス、ドイツ、イタリアでの現地視察を重ね、ブドウの栽培方法や品種、ワイナリーなどについて下調べを続けた。

 こうして79年、果樹団地(同区伊川谷町)の一角にセーベル、ピノノワール、カベルネ・フランなどヨーロッパ系品種と、竜眼、甲州など国内産の苗木が植えられた。ワインの味を左右する品種の選定。神戸の風土に合うかを見極め、海外から苗木を輸入した。

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 試験製造の免許が与えられたのは80年6月。初収穫したわずかなブドウで試作に挑んだ。醸造設備がなく、ワイン造りを行った場所はなんと、西区櫨谷町のしょうゆ会社の倉庫。しょうゆの匂いが移らぬよう注意せねばならない環境の中、「神戸ワイン」の試作品が完成した。

 完成を喜んだ宮崎は、81年8月に市民ら300人を招いた試飲会を行う。だが、会に参加していた洋酒輸入業者の今井商店(中央区)会長の今井拓雄(78)は「白濁した甘酸っぱい液体で、『うーん、これがワイン?』という感じだった」と振り返る。

 本格的な醸造へ向け、生産拠点となるシャトー(城)の建設にも取り組み始めた。フランス・ブルゴーニュ地方の1級シャトーを手本に完成したのが、現在もその姿をとどめる神戸ワイナリー農業公園だ。

 完成当時、農政局長だった嘉本禎夫(故人)は後年、「ヨーロッパのシャトーは貴族のものだが、神戸のワイン城は一般市民みんなのものだ」と誇った。

 専用品種と生産農家、そして醸造設備。本格生産に必要な三つがそろい、神戸ワインは販売開始へ向け加速していった。

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 図らずも、世間は「第3次ワインブーム」。関税引き下げと円高をきっかけに国内生産、輸入量とも大幅に伸び、消費の裾野が広がっていた。

 試飲会でまずまずの評価を得た神戸ワインは、販売前にもかかわらず、市内の卸売業者が続々と取り扱いを決定。市場に出回る前から愛好家約100人が「神戸ワイン愛好会」を結成するなど、注目を浴びての船出となった。

 そして84年、農業公園のオープンとともに一般販売が始まる。宮崎と若手農家が膝を交えた「あの日」から、13年後のことだった。(敬称略)(伊田雄馬)

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