神戸

  • 印刷
神戸新聞NEXT
拡大
神戸新聞NEXT
広大な敷地に広がるブドウ畑=神戸市西区
拡大
広大な敷地に広がるブドウ畑=神戸市西区
ブドウ棚の下で農業青年と話し合う宮崎辰雄元神戸市長(神戸みのりの公社提供)
拡大
ブドウ棚の下で農業青年と話し合う宮崎辰雄元神戸市長(神戸みのりの公社提供)
G20大阪サミットの夕食会に出席した各国首脳ら=大阪迎賓館
拡大
G20大阪サミットの夕食会に出席した各国首脳ら=大阪迎賓館

 6月28日夜、大阪迎賓館。G20大阪サミットの夕食会で、トランプ、プーチン、メルケルなど、各国首脳が居並ぶ前に出されたのは、神戸ワイン「ベネディクシオン ルージュ2016年」だった。神戸産のカベルネ・ソーヴィニオンとメルロをブレンドした最上級品で、赤ワインでは唯一選ばれた。海外の品評会でも数々の高評価を受け、「神戸ブランド」の顔に成長した神戸ワイン。その始まりは約50年前、「神戸ビーフに合うワインを作りたい」というある男のアイデアだった。たどってきた“浮沈の轍”を追った。

 1971年の盛夏、西区岩岡町の観光ブドウ農園で、第13代神戸市長の宮崎辰雄(故人)は、若手農家と膝を交えていた。

 時代は高度経済成長期。世間が好景気に浮かれる一方、日本の農業はコメの生産調整などで大きな転換点を迎えていた。

 「何か新しいことを始めないと立ちゆかなくなる」

 多くの農家が危機感を抱えていたこの時期、西区では大規模な果樹団地を作る計画が持ち上がっていた。

 問題は何を植えるかだった。第1候補に挙げられた生食用ブドウは、全国的に生産過剰で、栽培に手間が掛かるという難点があった。広大な土地の使い道に、誰もが頭を悩ませていた。

 「これからの農業はどうなる」。青々と葉が茂るブドウ棚の下で、ある青年が宮崎に不安を吐露した。その時、宮崎の頭にふと、かつて訪れたヨーロッパの美しい丘陵とブドウ畑の記憶がよみがえった。そこで味わったワインの豊かな風味と香り。あの味を再現できれば、神戸ビーフに並ぶ財産になるのではないか-。

 「ワインを作ってはどうだろう」

 その一言からワインプロジェクトが動き始めた。

    □  □

 まずは農家の協力を得るところからだった。

 後に株式会社神戸ワイン(現・神戸みのりの公社)副社長となる嘉本禎夫(故人)は当時、市の農政局(現・経済観光局農政部)員としてワイン事業推進の先頭に立っていた。

 「この地域の農家は3~6カ月で換金できる作物の経験しかない。売り物になるまで何年もかかる果樹を手掛けるには不安があった」。嘉本は、農家が抱えていた懸念をこう分析していた。

 農家を説得するため、農政局内では30人の若手局員による計画推進グループを結成して戸別に訪問。狙いは市の“本気度”を示すことだった。「神戸市も一緒にやるという局員らの熱意が(農家の)安心感につながった」と後に嘉本は振り返った。

 75年、押部谷町に高和第一生産組合が誕生。最終的には4地区の41人が協力を約束した。小さいながらも刻まれた最初の一歩。試作品のワインが誕生する5年前のことだった。

(肩書き、敬称略)

    □  □

 栽培から醸造まで、一貫した「純神戸産」が強みの神戸ワイン。成功と挫折を経験し、評価を高めてきた。約50年の歴史をひもとき、その道のりとテロワール(土地に根ざした味)を探る。(伊田雄馬)

神戸の最新
もっと見る

天気(12月17日)

  • 15℃
  • 10℃
  • 70%

  • 17℃
  • 8℃
  • 70%

  • 13℃
  • 9℃
  • 60%

  • 15℃
  • 10℃
  • 50%

お知らせ