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コロナショック 県内初感染1カ月(上)製造業

2020.04.01
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部品の仕上がりを点検する従業員。新型コロナウイルスの影響が見通せない中での操業が続く=神戸市西区伊川谷町、伊福精密

部品の仕上がりを点検する従業員。新型コロナウイルスの影響が見通せない中での操業が続く=神戸市西区伊川谷町、伊福精密

■「受注ゼロ」先行き見通せず

 通勤電車内でニュースサイトを点検すると、インドが3月25日から3週間、全土を封鎖すると伝えていた。中国を起点とする新型コロナウイルスは山河を越えて猛威を振るう。「インドもか」。兵庫県姫路市内で町工場を営む男性(51)=神戸市中央区=は衝撃を受けた。

 金属部品の接合に用いるはんだの製造工場を1人で切り盛りする。主要顧客の自動車部品メーカーから中国で毎月使う分を前月までに注文を受けるが、2、3月の受注はゼロだった。

 顧客の中国工場が部分稼働にとどまり、インド向けも前年のほぼ半分に縮小しており、2~4月の売上高は前年同期から約4割減りそうだ。インドは爆発的な感染には至っていないものの、3週間の外出禁止で顧客の工場停止は必至。「4月の注文がキャンセルにならないか」と身をすくめる。

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 兵庫県によると、2017年度の県内総生産(GDP、名目)は21兆3288億円。うち製造業は23・4%を占め、全国平均を2・6ポイント上回る。ウイルス猛はとどまることを知らず、特に自動車産業ではサプライチェーン(部品の調達・供給網)に連なる中小零細企業も含めて影響が広がる。

 金属加工会社の伊福精密(神戸市西区)は、自動車エンジン部品などの切削を手掛ける。注文は次第に減り、3月の売上高は前年同月比で3割近く減る見通しという。国内従業員約50人を率いる伊福元彦社長(48)は「最も多い量産品は月12万~13万個出ていたが、今は5万個くらいに減った」と漏らす。4月に予定していた欧州進出の延期を決めた。

 コロナ禍の波紋は大手部品会社にも伝播(でんぱ)する。自動車メーカーの1次協力会社、明石機械工業(兵庫県稲美町)は4月、国内6工場のうち1工場の操業を2日間止める。海外ではマレーシア工場を4月14日まで停止。インドネシア工場では日本人の自宅待機を現地当局に要請された。今は操業中でも、「マレーシアと同じ状況になるのでは」と担当者は案じる。

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 メーカー各社の脳裏にあるのが、世界経済を震え上がらせた08年のリーマン・ショックだ。

 現地の移動制限でフィリピン工場が停止中という貨幣処理機大手のグローリー(姫路市)。連結売上高の半分を海外が占め、中でも主力市場はイタリア、ドイツ、フランスと、深刻な感染国と重なり合う。海外比率が2割だったリーマン危機時に比べて先行きの不透明感は強い。「いつ終息するのか。トンネルの出口が見えない」と広報担当者は困惑する。

 伊福精密は当時、月間売上高が前年同月比で7割も減り、一般信用保証とは別枠の保証付き融資で急場をしのいだ。「かつて仕事の9割前後が自動車関係だった教訓から、航空機や医療、産業機械などに分野を広げてきた」と伊福社長。今回のコロナ禍でさらに事業展開を練り直すという。

 敵は目に見えないウイルスだ。企業活動がどのように翻弄(ほんろう)されるのかが、なお見通しにくい。耐性度と対応の手腕が問われる。(森 信弘、横田良平、長尾亮太、塩津あかね)

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 3月1日、新型コロナウイルスの感染が兵庫県内で初めて確認された。1カ月を経て、終息の兆しすら見えない。揺れ動く地域経済の現状を2回に分けて報告する。

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