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「俳人としての側面が加わることで、小津の全体像がより明らかになるはず」と話す松岡ひでたかさん=姫路市豊沢町
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「俳人としての側面が加わることで、小津の全体像がより明らかになるはず」と話す松岡ひでたかさん=姫路市豊沢町

 俳人で俳句研究家の松岡ひでたかさん(70)=本名・秀隆、兵庫県福崎町=が、映画監督・小津安二郎(1903~63年)の俳句作品について論じた著書「小津安二郎の俳句」が復刊された。8年前に私家版として出版した本が大手出版社の目にとまり、全国発売されるという極めて珍しいケース。出版を巡る情勢が厳しい中、地道に書き続ける人々に勇気を与えそうだ。

 松岡さんは24歳から俳句を始め、俳句結社「九年母」「ホトトギス」「蕗」を経て、現在は無所属。句集「磐石」「往還」、俳論「竹久夢二の俳句」「金子せん女素描」など多数の著書がある。

 小津の俳句に興味を持つきっかけは、雑誌「俳壇」2012年8月号の記事だった。掲載されていた小津の句に映画作品にも通じる味わいを感じ、生涯に残した全223句について論評。同年10月に30冊のみ自費で製本し、図書館などに寄贈した。

 本の中で松岡さんは、1933~61年の日記に記された俳句を丹念に拾い上げ、1句ずつ鑑賞。句の詠まれた背景についても調べ、映画との関連を探った。小津の俳句は「玉石混交」だといい、良くない句は「凡作」「駄作」と断じる。

 松岡さんが佳品とする小津句は〈黒飴もひとかたまりの暑さかな〉〈遠花火鈴木主水の屋敷跡〉〈鯛の骨のどに立てたる夜長かな〉など。一方で、季語がなかったり、1句の中に複数の季語や切れ字が併用されたりと、俳句の基本的ルールから外れた句が多いと指摘する。

 小津は37~39年、日中戦争に従軍。その間も〈春うらら 凡そ喰ひたきものバかり〉〈未だ生きてゐる目に菜の花の眩しさ〉など句作を続ける。「僕の芸術上の潔癖もまた何時か案外簡単にくずれるのかも知れない」という日記の記述も踏まえ、松岡さんは「映画『麦秋』『東京物語』などの沈黙(余白)の美しさは、この認識の反映」とみる。

 自費出版から7年後の昨年10月、河出書房新社の編集者から「再刊したい」との手紙が届いた。同社のムック誌「文芸別冊」で小津特集を計画していた時、東京の図書館で偶然私家版を見つけたという。松岡さんは快諾し、手元に残していた原稿データを提供して、先月出版された。

 松岡さんは「小津の句は素人ゆえに俳人特有の厚かましさがない。戦地でも詠み続けるなど、心意気はプロ以上。小津の俳句については従来ほとんど論じられてこなかったが、再刊を機に研究が深まれば」と期待する。

 新版「小津安二郎の俳句」は2640円。(平松正子)

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