姫路

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「ディテールなくして全体がでてきません」。丁寧に練習を進める岩村力さん=姫路市本町、姫路カトリック教会(撮影・平松正子)
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「ディテールなくして全体がでてきません」。丁寧に練習を進める岩村力さん=姫路市本町、姫路カトリック教会(撮影・平松正子)
姫路第九合唱団が関西フィルハーモニー管弦楽団、プロのソリストと第9を披露したコンサート=2017年12月、姫路市文化センター
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姫路第九合唱団が関西フィルハーモニー管弦楽団、プロのソリストと第9を披露したコンサート=2017年12月、姫路市文化センター
楽譜(1)
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楽譜(1)
楽譜(2)
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楽譜(2)
金素栄監督
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金素栄監督

 師走の風物詩となって久しいベートーベンの交響曲第9番「合唱付」。冷え込んでくるとあちこちで第九の演奏会が開かれる。年間の公演回数は100を超す、それも12月に集中する一大イベントだ。なぜこれほど大勢の老若男女を惹きつけるのだろう。今年で44回目の公演となる姫路第九合唱団に入団し、実際に歌ってみると、「歓喜の歌」が示す不思議な魅力に体が震えた。(加藤正文)

 合唱団は200人超。夏から声楽家(井上敏典さん、土田景介さん)の指導で練習を重ね、11月に入り、本番で指揮する岩村力さんが登場。快刀乱麻のさばきで音と言葉をチェックしていく。

 「ここからは合唱の聴かせどころです」(楽譜1)

 〈ザイト ウムシュルンゲン ミリオネン〉(抱き合え、幾百万の人々よ!)

 低弦とトロンボーンに導かれ、男声がユニゾンで荘重に歌い出すところだ。

 「読みだけでやろう」

 合唱がリズム読みする。

 「ウムは3拍目でしょ。もう1回。tとumは分離してください。もう一度」

 「そうです。さっきの何倍もtの発音が出てきた」

     ◇

 〈ディーゼン クス デア ガンツェン ヴェルト!〉(この口づけを全世界に!)

 「僕がやりたいのは(ガンツェンで)フォルティシモになったときにお互いに耳を使うこと。アルトは右のベースが、ベースは左のアルトが、それぞれ同じ音だなと感じてください」

 ガンツェンのハ長調の和音を確認していく。

 「音が束になる感覚。それぞれの和音の香りを覚えてください」

 聴き合う大切さを再三呼び掛ける。「ご自分の声だけじゃなくて必ず仲間の、まずは近い方、できれば遠いパート。努力しないと聴くということは難しい」

     ◇

 楽譜2に進む。指示は「アダージョ マ ノントロッポ、マ ディヴァート(ゆっくりと、しかし甚だしくなく。敬虔に)」

 歌詞の意味は〈君たちはひれ伏すか、幾百万の人々よ?〉だ。オーケストラが静かに主題を奏でた後、合唱に入る。深みと説得力が求められる難しい部分だ。

 岩村さんは「stürzt」の発音にこだわる。

 「1ト2ト3ト。3から3トの間にもう1個、空間がある。音がないのに一番雄弁なんですよ。無音だけど音楽みたいなね。ディミニエンド(だんだん弱く)で感じましょう」

     ◇

 交響曲史上初めて声楽が導入されたのが第九だ。人間愛を歌うシラーの原詩をベートーベンが再構成し、独唱と合唱で歌い上げる。

 第九の調性はニ短調。作曲家はここぞというときにニ短調をもってくると岩村さんは言う。「宇宙の発端、ひとしずくが始まるような第1楽章の冒頭。そして4楽章のみなさんのフロイデはニ長調。70分近い曲の最初と最後の大きな変化。みなさんはその最終局面を担っているのです」

■第九なぜ日本で人気? 映画制作の金監督に聞く(聞き手・宮本万里子)

 日本ほど第九が広く歌われている国はない。なぜか? 第九を歌う市民を追ったドキュメンタリー映画「ルートヴィヒに恋して」を作った金素栄監督(51)=神戸市須磨区=に聞いた。

 -第九を映画の題材にした理由は。

 「結婚を機に2003年から日本で暮らし始め、年末に第九の公演を聴きに行った。歌う人はプロだと思っていたら市民合唱団。第九は難曲。どうして市民が歌えるの? と驚いた。日本では年の暮れになると、ほかにも至る所で第九が流れる。背景を知りたくて映画の題材に選んだ」

 -映画製作を通じて何が見えたか。

 「『全ての人々はきょうだいになる』と歌う第九を日本では『平和の歌』と解釈する人が多い。映画には憲法9条の条文を第九のメロディーに乗せて歌いながら行進する人が登場する。第二の人生のスパイスとして歌う人や歌の練習会の場を居場所だと思って足を運ぶ高齢者も。合唱は人と人との調和の結晶。第九は日本人にとって音楽を超えた意味を持つ曲だと感じた」

 -今年2月に映画が公開された効果で「姫路第九合唱団」の団員が増えた。

 「願っていたのでうれしい。映画という媒体は親しみやすいので敷居を超えやすかったのではないか。若い新入団員も増えたと聞いた。戦争体験者が減る中、第九を通じて平和の大切さを次世代に引き継げる。さらに流れが広がってほしい」

     □

 「ルートヴィヒに恋して」は2020年1月4日から、大阪市淀川区十三本町のシアターセブンで上映される。

■姫路第九合唱団 1972年初演、質の高い演奏

 姫路労音が公募する「姫路第九合唱団」の初演は1972年12月。以来ほぼ毎年、年末に公演を続ける。

 入団資格は、小学生以上▽初心者歓迎▽情熱がありチケットを広めることなど本番の成功に向けて協力できる人。門戸は広いが、公演は有料で質の高さが求められる。本番では、関西フィルハーモニー管弦楽団などの一流楽団と一線で活躍する指揮者が団員を導く。

 近年、団員減少が課題だったが、今年は同合唱団などを追ったドキュメンタリー映画「ルートヴィヒに恋して」が公開された効果もあり、例年より多い40人が新たに入団。2021年は同年秋に開館を予定する姫路市文化コンベンションセンターでの公演を目指す。

 今年は、同市文化センター(同市西延末)で12月15日午後3時開演。一般5500円など。姫路労音TEL079・290・5522

(宮本万里子)

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