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宮本悦男さん
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宮本悦男さん

■尼崎の渡船店支配人 宮本悦男さん(兵庫県西宮市)

 大阪湾に一直線に浮かぶ防波堤。すぐそこに工場街の煙突、そして六甲の山並み。同県尼崎市の沖合1・5キロ、遠く芦屋沖まで延びる長さ4キロ超の通称「武庫川一文字」。関西有数の釣りスポットであるこの場所へ、船で釣り客を送迎するのが仕事だ。

 「今はアジやタコがよくやってきますね。チヌやスズキといった大型魚も」。水質も改善され、年間で尼崎沖に現れる魚の種類は80を超える。かつて「公害の街」と呼ばれた工都の知られざる一面だ。

 実家は元漁師の祖父が始めた尼崎の渡船店。幼い頃から釣り好きで、学校から帰ると武庫川の河原で釣りに熱中した。大学卒業後は父の勧めで商社に就職したが、釣りへの思いは募るばかり。1年半で退職し、故郷の海に戻ってきた。「自分にとってはこの海が全てだから」。当時を振り返り、日焼けした顔は笑う。7年前からは支配人として企画や運営にも携わる。

 今では渡船業のほか、魚を通じた地域貢献にも取り組む。一昨年から尼崎で釣れる魚について解説し、試食する出張講座を始めた。ある日の講座で「尼の魚なんて食えるんか」と言った参加者が、試食でチヌの刺し身を口にして幸せそうな顔を見せたという。参加者の反応の変化も、講座を開く励みになった。

 子どもたちの食育も関心事の一つだ。釣り客が釣った魚を、市内の子ども食堂などへ無償で提供する「フィッシュシェア」はその代表例。家族連れ歓迎の釣り教室や、動画投稿サイトで魚のさばき方、調理法を紹介する試みも。尼崎の魚がつくる輪は徐々に広がりつつある。

 「尼崎、特に南部といえば無機質な工場街。おいしい魚でそのイメージを変えたいですね。自分だけではなく、スタッフやお客さんと皆で」。海へ感謝の思いを胸に、今日も船から沖を見つめる。西宮市在住。40歳。(山本 晃)

【メモ】インストラクターが指導する初心者向けの週末釣り教室は、参加費無料(渡船代とえさ代が別途必要)。ライフジャケットや釣りざおは貸出品があり、手ぶらで参加できる。予約が必要。武庫川渡船TEL06・6430・6519

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