正平調

時計2020/04/06

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銀座にある、そのバーの名前は「魔里」。悪魔が棲(す)んでいるわけではない。半世紀以上前、作家の梶山季之さんが名付けた。扉を開けると優しいマリ子ママが出迎えてくれる◆昭和の風情漂う文壇バーだ。ママの人柄に惹(ひ)かれて数多くの作家たちが集まった。井上靖さん、北杜夫さん、開高健さん。陳舜臣さんや藤本義一さんら兵庫ゆかりの作家たちも立ち寄った◆お酒が入ってくつろいだ文人たちは、サイン帳にペンを走らせた。「お前は蛙である」(大島渚さん)、「花に嵐のたとえもあろう。サヨナラだけが人生だ」(石堂淑朗さん)、「死んだら神様よ」(星新一さん)…。文言とともに筆跡も味わい深い◆コロナ禍で各地の盛り場が苦境に沈む。感染拡大を防ぐためにバーやナイトクラブ通いは当面自粛。もともと脆(もろ)い経営基盤だ。終息まで持ちこたえられるだろうか◆文化の状況も似ている。音楽も演劇も芸能も、公演は中止や延期で先行き不透明だ。実際、観客に来てもらうからギャラが得られ、その視線によって演者のレベルも上がる◆文化の「化」に草かんむりを付けると花になり、下に貝を置くと貨となる。義一さんは銀座でも持論を話したことだろう。文化が動かないと街に華やぎは生まれず、お金も回らないと。2020・4・6

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