正平調

時計2020/03/27

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自らを“植物の愛人”と称し、94年の生涯に集めた草花の標本は40万に上るという。日本植物分類学の父、牧野富太郎が書き残した詩歌の一節には〈憂鬱(ゆううつ)は花を忘れし病気なり〉とある◆いわく、「花に対すれば常に心が愉快でかつ美なる心情を感ずる」(「牧野富太郎自叙伝」)。花さえあれば独りでも寂しくない、とも記した。その境地には達しえないが、いまが花の季節でよかったとは思う◆新型コロナウイルスの憂鬱が人の世を暗く覆ってはいても、草はいつものようにもえ、花はいつものように咲く。きのうは神戸でも桜の開花が宣言された。こずえに笑う淡色の一輪一輪に見とれて、心がなごむ◆門出の3月も催しという催しが中止や縮小を余儀なくされ、まちの花屋さんが苦境だという記事があった。みなで連れだっての花見もはばかられる当節である。自宅で草花を友とし、杯を傾ける春もいいだろう◆わたしが宗教家なら草木をご本尊にしたい。牧野はこうも述べていた。植物をあわれむと思いやりの心が生まれる。さすればけんかのない、平和な世になりましょうと◆そうか。コロナ疲れのさまざまなイライラもおまえが和らげてくれているんだな。そう問うてみても、花は静かに笑ってこちらを見返すのみである。2020・3・27

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