正平調

時計2020/03/25

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作家の菊池寛がある小学校の卒業式に出席した。児童の行儀のよさに感心しつつ、その言葉には胸が痛んだという。「私たちには、これが一生にたった一度の卒業式だろうと思います」◆戦前の、貧しい家庭の子どもが多く通っている学校だった。進学は望めなかったのだろう。「言何ぞそれ悲しきや」と心情をつづっている(「話の屑籠と半自叙伝」)◆いまなら2度、3度、もしくはそれ以上、卒業式の機会はある。とはいえ、この春は「たった一度の」を実感せずにいられない。新型コロナウイルスで暗いご時世、ひときわまぶしい児童らの卒業写真に見入る◆参列する人数を絞り、時間も短くして行われた式が多いなか、各校それぞれが凝らした趣向を記事が伝えている。先生たちが在校生の代わりにリコーダーを奏でたり、メッセージの張り出しや映像で祝福したり◆グラウンドに出た卒業生が屋内ではできなかった合唱を先生にプレゼントしたところもあった。「たった一度の式なのに…」の当初の落胆を、一度きりのすてきな思い出に変える。うれしい魔法は一生とけまい◆竹久夢二の詩「若き日」を。〈かなしきときは/悲しむこそよけれ/うれしきときは/喜ぶこそよけれ/わかき日のために〉。卒業、おめでとう。2020・3・25

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