正平調

時計2019/07/10

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中学1年の少女が作文を書いた。いじめを受けていることを先生に伝えるためである。去年読んだそんな記事を思い出した。作文の題名が何よりも忘れがたい。「人間なのに」という◆怒り、悔しさ、やりきれなさがぎゅっと詰まっているかのように聞こえる。周りの無理解と偏見、心ない差別にいじめ。被害者の思いがにじむ「人間なのに」という言葉ほど、胸に迫ってくるものもそうはない◆「人間なのに」の涙がどれだけ流れたかと、ハンセン病をめぐる裁判に思う。政府がきのう、控訴はしないと表明した。国の隔離政策が患者だけでなく家族への差別にもつながった、とした熊本地裁判決である◆社会の目を恐れて肉親に患者がいることも口にできず、家族の絆が裂かれてしまった人は多い。判決について安倍首相は「受け入れがたい点もある」と語ったが、心のこもった救済をぜひとも急いでもらいたい◆浅香甲陽(あさかこうよう)という明治生まれの俳人がいる。兵庫県の出身で、29歳のころに群馬県のハンセン病療養所に入ったという。亡くなってから編まれた句集に、いまごろの句がある。〈梅雨の夜の郷愁の貝ひとにぎり〉◆家族が、ふるさとがどれだけ恋しかったろう。「人間なのに」の声なき声が聞こえてきそうな雨の夜である。2019・7・10

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