正平調

時計2019/07/05

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「芸術は長く、人生は短し」。この言葉は古代ギリシャの医師、ヒポクラテスが語った「医術を極めるには人生は短すぎる」が転じたものという◆精神科医のなだいなださんはそれを“やぶ医者の思想”と名づけた。自分の技量を過信せず、まだまだ未熟だ、「やぶ」だ、ということを忘れずに患者と向き合い、研さんを積む。すなわちこれ名医といえよう◆養父市が、その名もユニークな「やぶ医者大賞」を設けて6年目になる。山あいや離島といったへき地医療に尽力する若手医師をたたえるもので、今年は熊本県と三重県の2人が選ばれたと日曜の記事にあった◆そもそも「やぶ医者」とは養父に昔いた名医のことを指すそうな。重い病もたちどころに治して評判が広がり、腕の悪い医者まで「養父医者」を名乗ったことから「やぶ」が「へた」の意になってしまったとか◆認知症の人が集うカフェを設けたり、お年寄りが漢字の書き取りなどをする「学校」を開いたり、と受賞者の紹介にある。ともに笑って泣いて。病というより人と向き合い、暮らしに寄り添う毎日が目に浮かぶ◆ヒポクラテスは言ったそうだ。「患者を治した」のではなく「患者が治った」と。人間の奥底にある生きる力を引きだすのもまた名医なのだろう。2019・7・5

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