正平調

時計2019/07/01

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日本で最も有名な俳句の一つかもしれない。〈閑(しずか)さや岩にしみ入る蝉(せみ)の声〉松尾芭蕉。さて、この句に出てくるセミの種類は? かつて論争になったことがある◆昭和初期のことだ。アブラゼミ説を主張する歌人斎藤茂吉に対し、文学者の小宮豊隆がニイニイゼミ説を唱えた。芭蕉がこの句を詠んだのは山形県立石寺。実地調査の結果、ニイニイゼミ説に軍配が上がった◆一昔前、関西で暮らす虫取り少年のあこがれはクマゼミだった。亜熱帯性で動きは機敏。体は黒曜石のように輝き、体長は約6センチで日本最大。数が少ないうえ木の高い所で鳴くから、虫取り網で捕まえるのは至難の業だった◆そのクマゼミが“北上”し始めたのは高度成長期の後だ。排ガスやクーラーの生活熱で気温が上がるヒートアイランド現象が進み、九州から関西、関東へと勢力を広げた。最近では東北でも観察記録がある◆だがクマゼミにとってわが世の春かといえば、そうでもない。今では街路樹で簡単に捕まえられる。仲間が増えすぎて注意力が散漫になっているそうだ。雑踏の中で五感が鈍る人間を想像すれば、人ごと、いや虫ごとではない◆きょうから7月。セミの初鳴きはもうすぐ。芭蕉が現代の都市で蝉時雨を聞いたら、どんな句を作るだろう。2019・7・1

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