正平調

時計2019/06/29

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“魂の俳人”と呼ばれた村越化石(むらこしかせき)さんの俳号には「生きながら土に埋もれ、石と化した」との意味がある。故郷から離れたハンセン病の療養所で句作に励み、5年前、91歳で亡くなった◆40歳で初めて句集を出したときの話が、出身地である静岡県藤枝市の広報紙に紹介されていた。「実家に迷惑をかけてはいけないと思い、母に手紙を出したんだよ」。返事が来た。「張り切ってやりなさい」と◆「ご心配なく」と母はつづったものの、手紙には書けぬようなつらい思いをしてきたことも想像にかたくない。執拗(しつよう)な差別と偏見のやいばは当時、患者はむろんその家族にも向けられていたから…いや、ちがう◆「当時」ではなく「いまも」だろう。561人いる原告のほとんどが匿名だという事実に、社会が抱える病の根深さを知る。きのう、だれにも悟られないように判決をひとりかみしめた人がどれだけいたことか◆村八分、離婚、解職…というすさまじい差別にさらされ、いまもおびえ、身内の病を秘して語れない。ハンセン病患者の家族が苦しめられてきたのは隔離政策を長年とり続けた国の責任だと、熊本地裁が断じた◆化石さんは詠んだ。〈生い立ちは誰も健やか龍の玉〉。人はみんな、家族を幸せにするため生まれてくる。2019・6・29

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