正平調

時計2019/06/11

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田辺聖子さんの本をひらくと、言葉がきらきらと宝石のように光って見える。気にいったものを一つあげるとすれば、〈人生の真骨頂は畢竟(ひっきょう)、夕ごはんにあり〉(「夕ごはんたべた?」)◆毎日の最大の喜びが夕飯で、ナニ悪かろう。すばらしいではないか-。同じ小説からもう一つ、わが家に客を招いての金言。〈客が、鼻唄でトイレから帰ってくるのを見るときこそ、人生の黄金のときである〉◆優しい人を書かないと小説ではない、夢を見ないと夢の小説は書けないとおっしゃっていた。毒を含んだユーモアあれば、涙あり。関西弁でいうところの「笑かしよんなあ」「泣かしよんなあ」の作品群である◆男性向けの週刊誌にエッセーを書くことになったとき「女の子が男の読めるもの、書くのかいな」。冷ややかな世間の目に奮い立ったという。「面白いのを書いて、こっち向かしたるわ」。言葉の通りとなった◆「神サンは人の命終(みょうじゅう)にあたり、〈返(かや)せ〉といってくる」。ある文章に書いている。何をですか? と聞けば〈持ってるもん全部じゃ〉。神さまから借りていた「人生」を返す。それが寿命というものだろう…と◆田辺さんが91歳で旅立った。神サンにどれだけ返してもあまりある言葉の宝石をこちらの世界に残して。2019・6・11

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