日々小論

  • 印刷

 自宅の戸棚に“宝物”の袋がある。チケットや公式ガイドブック、パンフレット、迷い子ワッペン…。手に取るだけで50年前のあの熱気を思い出せる。

 1970年の春、日本万国博覧会、つまり大阪万博が開幕した。「人類の進歩と調和」をテーマに、77カ国が参加した。閉幕までの半年間で6400万人以上が入場したと記録にある。

 当時小学生だったが、親に連れられて千里丘陵の会場に何度も足を運んだ。そこにはカラフルで奇妙な建物が並び、多くの外国人が歩いていた。アメリカ館で何時間も並んで月の石を見た。企業パビリオンにあった人間洗濯機やワイヤレス・テレホンは近未来そのものだった。

 今になって、分厚い公式ガイドの巻頭にある「基本理念」をしっかり読んでみた。

 「開けゆく無限の未来に思いをはせつつ、過去数千年の歴史をふりかえるとき」と格調高く始まる。文章は文明と進歩をたたえつつ、しかし「人類はその栄光ある歴史にもかかわらず、多くの不調和になやんでいることを率直にみとめざるをえない」と書く。世界の不均等や摩擦にも触れる。「お祭り」に見えた万博の理念がこうしたものだったことに、少々驚いた。

 理念の草案は、京都大教授だった仏文学者の桑原武夫さんが起草したものだという。

 では、どうやって未来を開くのか。「人類の知恵がもし有効に交流し刺激しあうならば」、高次の知恵が生まれ、理解と寛容によって、よりよい生活に向かって調和的発展をもたらすであろう。文章はそう続いた。

 この「もし」は、分断が進む世界を見る限り実現しているとは言い難い。5年後の大阪・関西万博では、この未来の続きを描くことができるだろうか。

日々小論の最新
もっと見る

天気(5月28日)

  • 26℃
  • ---℃
  • 0%

  • 25℃
  • ---℃
  • 0%

  • 27℃
  • ---℃
  • 0%

  • 29℃
  • ---℃
  • 0%

お知らせ