日々小論

  • 印刷

 東日本大震災の被災地に届いた聖火が揺れている。新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を受け、計画通りの五輪開催を主張していた国際オリンピック委員会(IOC)が延期を含めて検討する方針に転じた。

 「選手第一」で延期や中止を求める声が国内外で高まる中、「開催できるかのように振る舞うのは無責任」とIOCや日本の対応を批判した米紙の社説を読み、思い出す光景がある。

 2013年、ブエノスアイレスでのIOC総会で、東京電力福島第1原発の汚染水漏れが「コントロールされている」かのように振る舞った安倍晋三首相のプレゼンテーションだ。

 政府が講じてきた汚染水対策は当時も、原発事故から9年たった今も終わりが見えない。厳格な放射線検査で福島県産の農産物の安全性が証明されても風評被害は収まらない。

 避難指示が解除されたエリアと道路を1本隔てただけで、人が住める見通しが立たない帰還困難区域が広がっている。

 2月に取材で訪れた福島県双葉町は今も全町避難が続くが、JR双葉駅周辺など一部で避難指示が先行解除され、聖火リレーコースに急きょ追加された。聖火は再開したJR常磐線で双葉駅までランタンで運ばれ、突貫工事で整備された駅前ロータリーを周回するという。

 再建にこぎつけた神社や荒廃する家並みが混在するまちなかも見てもらい「双葉の今を発信したい」という地元の思いは宙に浮いた。“復興五輪”であるかのような振る舞いに置き去りにされる人たちの顔が浮かぶ。

 開催の結論を待たずに、聖火は26日に福島のJヴィレッジを出発するという。延期の場合、聖火は? 被災地にともり続けるなら希望も持てるのだが。

日々小論の最新
もっと見る

天気(5月27日)

  • 26℃
  • ---℃
  • 20%

  • 26℃
  • ---℃
  • 10%

  • 26℃
  • ---℃
  • 20%

  • 27℃
  • ---℃
  • 20%

お知らせ