日々小論

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 何年も前のことになるが、近所に気になる女の子がいた。Kちゃんとしておこう。赤ちゃんの頃から知っていて、ランドセル姿を見たときは感慨深い気持ちになったりした。

 ある日の夕方、雨の中をずぶぬれで歩くKちゃんと遭遇した。当時小学2年生ぐらいだっただろうか。声をかけようとして、Kちゃんの母親が傘を差して後方からやって来くるのに気づいた。ところが彼女は娘との距離を空けたまま、わが子の背中をにらみつけていた。その形相に気おされた。

 数カ月後の日曜、商店街でKちゃんが両親に叱られていた。父親と母親が道端に座り、立ったままのKちゃんに大声を浴びせていた。両親は酒が入っているようにも見え、道行く人が何ごとかと振り返っていた。やはり声をかけられなかった。

 母親とは、あいさつする程度の関係だった。フルタイムで働きながら懸命に子育てしていたように思う。しかし、Kちゃんの服装は汚れが目立つようになった。学校にいるはずの昼間にぶらぶらしていたという目撃談も度々耳にした。

 児童相談所に電話しようか迷った末に、Kちゃんの通う小学校に連絡した。知っている先生がいたからだ。返答は予想を超えていた。「Kさんは先日、保護されました。自宅とは別の場所で元気にしています」

 KちゃんのSOSを見ていたはずなのに、なぜあれほど腰が重かったのか今も時々考える。「誰かが児相に通告してくれるかも」という他人任せの気持ちもあったと思う。

 児童虐待の件数は過去最高を更新し続けている。周囲の大人の躊躇(ちゅうちょ)が、虐待されている子どもを一層危険にさらす恐れがある。身をもって痛感している。

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