日々小論

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 関西の私立大入試が本格的にスタートした。この時期、大学受験を前に進路で悩んでいたことを思い出す。

 文学部を受けたいと話すと、高校の教師はこう言った。「文学部で勉強したいことは趣味で独学して、就職に有利な学部を受けた方がいい」。教え子の将来を案じてくれていると分かりつつも、結局は志望を通した。

 文学部などで扱う基礎的な学問は、往々にして「役に立たない」と言われる。こうした風潮を背景に昨年、大阪のサントリー文化財団が「役に立つって何?」というトークイベントを開いた。モンゴル遊牧民を調査する小長谷(こながや)有紀さんは「人類がいかにして乳搾りを開発したか。本当に何の役に立つか分からない」と研究の一端をユーモラスに紹介しつつ、「いつ誰にとって有用になるかは未知のこと。有用性を考えず研究することに価値がある」と話した。

 2016年にノーベル医学生理学賞を受けた大隅良典さんも「社会は基礎科学を一つの文化と考えてほしい」とスウェーデンでの記念講演で訴え、「(自身の研究を)役に立つとは思わなかった。後で有益だと分かるのはよくあること」と述べた。

 助言を聞かずに進学した文学部は、理屈抜きに楽しかった。卒論では「村境(むらざかい)」を研究し、住民が意識する境は一つなのかどうか、境は線なのか点なのか-などを深く考え、境界とは何かという本質論に向き合った。就職を有利にする研究ではなかったが、物事を考察する基本を教えてくれたように思う。

 受験生の皆さんはどの学部に進むことになっても、将来につながることに加え、純粋に知的好奇心が満たせることを学んでほしい。それが役に立つという保証はないが、断然面白い。

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