日々小論

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 城巡りを始めて10年余りになる。立派な石垣や壮大な構えを求めて訪れ始めたのだが、初心者向けの「城の見方・楽しみ方」(小和田哲男さん監修)を読み、見る目が少し変わった。

 城づくりにどれくらいの費用がかかるかの項がある。秀吉時代の大坂城の全面復元に工費780億円、工期5年と、大手ゼネコンが見積もったそうだ。

 その項の最後、書き添えられた数行に目がとまった。いわば巨額の公共工事で働く人への日当はいかほどだったか。秀吉の城を覆い隠すようにつくられた徳川大坂城で、労働者に払われた日当は「食事付きで銀1匁(もんめ)3分」。現代の貨幣価値にして約2100円という。九州の黒田藩に残る記録である。

 他の藩も似たり寄ったりだろう。豪壮な城は労働者の超低賃金でできている。と知れば、城を見上げての感嘆符が小さくなってしまう。

 中国の誇る世界遺産・万里の長城も働く人の恨みをかってできたと、作家陳舜臣さんの著書で教わった。たとえば、こんな伝説が残る。

 長城建設で夫が連れて行かれた。妻は夫のためにつくった冬服を持って、遠く離れた長城の工事現場に着く。しかし着せたい夫はすでに亡くなっていた。号泣していると城壁が崩れ、中から夫の遺骸が…。

 国を挙げて何事かに突き進むとき、どこかにしわ寄せがいくものだ。笑みの陰に、庶民の歯ぎしりがある。二つの話はそう語りかける。

 安倍首相の施政方針演説を読み返す。五輪、パラリンピックにからめ、「希望」や「夢」など華やかな単語が、いつにも増して目に入る。

 陰に、うめき声はないでしょうね。

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