日々小論

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 芥川賞・直木賞の発表があった夜、パブリックビューイングを行ったまちがある。青森県の八戸市だ。

 東京、大阪に住む地元出身作家の小説が両賞の候補となった。ダブル受賞を祈って、発表の生放送をみんなで見守る企画である。ざっと30人が集まった。

 会場はまちの中心部にある八戸ブックセンターだ。ほかに例がないだろう。市が営む本屋さんである。

 しばらく前、知人の案内で訪れていたので、あああの店内で…と懐かしさがこみあげた。

 ビルの1階、300平方メートルほどの店内に哲学や人文科学、自然科学など約8千冊が並ぶ。「いのり」「まつりごと」「かんがえる」などのテーマで分けているのがおもしろい。例えば「戦前・戦時中」の棚には、野間宏の「真空地帯」、和辻哲郎の「風土」、そして昭和史関連。

 ベストセラーや実用書などは置かない。まちの本屋さんを圧迫しないためだそうだ。いわば、なかなか売れない良書を売る。これが基本である。

 小林真(まこと)市長の発案で2016年12月にできた。18年度を見れば、人件費を含めた歳出は9500万円、本の売り上げや寄付金などの歳入が4700万円。その差、4800万円を一般財源でまかなう。この4800万円を多いと思うか、妥当と考えるか。市民の受け止めはさまざまと、知人は言う。

 水産都市にして工業都市。その23万人のまちに生まれた活字文化の拠点である。潤いの文化のひとしずくと思えば、はた目には十分に役割を果たしているし、なにより意欲を買う。

 間もなく新年度予算の季節に入る。さて、兵庫県内の市や町は、どんな潤いのひとしずくを用意しているのだろう。

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