日々小論

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 長々と人の自慢話に付き合うのはしんどい。心が狭いので、すぐ顔に出てしまう。自慢の根拠が都合よく切り取られたものだったらなおさらだ。

 通常国会初日の首相の施政方針演説がまさにそれだった。

 例えば、地域ぐるみの移住支援策の成功例として紹介された男性のエピソード。東京から島根県江津市に移住し農業に励んでいたが、実は昨年末に帰京していたとオチが付いた。

 指摘を受けた政府は「3年以上居住しており、問題ない」との見解だが、移住者が根付いてくれるかは人口流出に悩む地域には切実な問題だ。期間限定のいいとこ取りでは地方の厳しい現実が見えてこない。

 経済や財政に関する説明では「来年度予算の税収は過去最高となりました」「公債発行(借金)は8年連続での減額であります」と断言した。

 だが、いずれも当初予算案での試算にすぎず、実際には景気次第で税収が減る年も、追加の借金をする年もある。現に2019年度は当初予算より税収が約2兆円減り、借金は追加を重ねて18年度を上回る見通しだ。

 見込みを確定のように表現するのはミスリード。記者がこんな予算原稿を書いたら、即デスクに突き返される。

 「復興五輪」を掲げた場面では、たまり続ける汚染水や農産物の風評被害などコントロール不能の課題には触れなかった。

 IR事業は、いつの間にか「複合観光施設」と言い換えることにしたようだ。疑惑と結びつく「カジノ」や「IR」は「桜」と同様、使わずに通した。

 首相はひとり「自信と誇り」に満ち、希望あふれる新時代を語る。どれだけの人が置き去りにされるのだろう。顔をしかめたのは私だけではないと思う。

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