日々小論

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 「最後の一人まで」は阪神・淡路大震災で注目された言葉だ。東日本大震災などの被災地にも引き継がれている。

 最後の一人まで「見守る」「救う」「関わり続ける」…。通底するのは「誰一人切り捨てない」という理念だろう。

 阪神・淡路の経験を基に国内外の被災地支援に取り組む神戸の団体「CODE海外災害援助市民センター」で役員を務めた3人が、ある会場でこの言葉について語った。興味深いのは三者三様の捉え方である。

 水没したバスの屋根で乗客らが助けを待つ。ヘリコプターによる救出を見守りながら、誰もが「最後の一人まで」と願う。「それが言葉の意味するところ」と述べたのは、神戸大名誉教授の芹田健太郎さんだ。

 多数決の原理では、意思決定でどうしても少数意見が排除される。逆に災害時は少数者をどう救うかが問われる。「最後の一人の重み」を、国際法学者の芹田さんは力説してきた。

 兵庫県立大教授の室崎益輝さんは、防災の専門家として遺族の聞き取り調査を続けてきた。

 犠牲者の一人一人に人生があり、亡くなった事情も異なる。それを理解するための聞き取りを「最後の一人まで」との思いで。統計の数字だけでは見えてこないものがあるのだ、と。

 「99人が賛成しても、1人の異論に耳を傾ける」と語ったのは、NPO代表を務める松本誠さん。少数意見が結果的に多くの賛同を得ることもある。「最後の一人」を無視せず、「最後の一人」の納得を得る。熟議の合意形成を促す言葉と取る。

 どれも「なるほど」と感じ入る。こうした考え方が浸透すれば、世の中はきっと優しく明るくなる。話を聞くうちに、未来を開く言葉だと思えてきた。

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