日々小論

  • 印刷

 いつごろからだろう。感動や勇気、元気を与えたい。そんな言い回しをいろんな場面で見聞きするようになったのは。

 「全力で歌って勇気と感動を与えたい」と歌手が話すこともある。しかし概してスポーツ選手に多い。

 マイクを向けられ、あるいは取材の記者に対して「勇気を与えたい」と力をこめる。高校生までが「見ている人に希望や感動を与えたい」と言う。

 偽りのない気持ちとしても、またか…と思ってしまう。こう言うのが当たり前という雰囲気があるのか、とも。

 作家村上春樹さんが、読者との応答をまとめた著書「村上さんのところ」で、この話題に触れていた。「勇気はあげるもの?」と疑問を投げかける読者へ答えて

 「(勇気って)そんなに簡単にもらったりあげたりするもんじゃないですよね」

 ヴィッセル神戸でもプレーをしたサッカーの元日本代表、三浦淳宏(あつひろ)さんがテレビ中継で話していた。

 「感動は与えるものではなく、感じてもらうものです」

 8年前、解説者として出演していたときのコメントで、胸にストンと落ちた。メモに残るこの言葉を勝手に解釈して分かりやすくすれば、こうなる。

 「選手は感動や勇気を与えたくてプレーをするのではありません。勝利を目指して懸命にプレーをする。その姿が結果として、見ている誰かの心を動かす。感じてもらえるのです」

 東京五輪とパラリンピックの年である。この1年、これまで以上にたくさんのスポーツ選手の言葉を耳にするだろう。

 ぜひ、「与える」ではなく、実感のこもった一言を。そして何より、心を動かすプレーを。

日々小論の最新
もっと見る

天気(6月7日)

  • 29℃
  • ---℃
  • 0%

  • 26℃
  • ---℃
  • 0%

  • 30℃
  • ---℃
  • 0%

  • 29℃
  • ---℃
  • 0%

お知らせ