日々小論

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 重力の影響が少ない宇宙では筋肉の衰えを防ぐため、宇宙飛行士は毎日数時間のトレーニングに取り組む。地球に戻ったとき立ち上がれなくなるからだ。宇宙ステーションに半年滞在し、3年半前に帰還した英国人ティム・ピークさんが自著「宇宙飛行士に聞いてみた!」(日本文芸社)で紹介している。

 少し前、体にちょっとしたトラブルが見つかり、しばらく入院した。数日間、ベッドの上だけの生活を送り、病室を移ったとき、足に力が入らずにがくぜんとした。足腰に負荷をかけずにいた結果、鍛錬を怠った宇宙飛行士のように、歩けなくなっていたのだ。年齢に関係なく、入院時にままあることという。

 怖さを感じたのが、退院して初めて道を歩いたときだ。完全には筋力が戻っていない中、人々の歩行スピードに圧倒された。背後から追い抜く男性に驚き、つまずきそうにもなった。ヨタヨタと歩く存在を誰も気に留める様子はなかった。歩きにくさを抱える高齢者や障害者の気持ちに思いが至った。

 「心のバリアフリー」が叫ばれて久しい。段差の解消などハード面のバリアフリー化は着実に前進している。が、意識の面ではまだまだではないか。自分自身を振り返っても、散歩中に追い抜いた男性のように、気付かないうちにバリアーになっていたということもあったに違いない。反省しきりである。

 〈宇宙船においては、宇宙飛行士がどれだけほかのクルーの役割を理解できるか(略)によって大きな違いが出る〉。ピークさんが先の自著に記した一文だ。心のバリアフリーを進めるのにも相手に対する「理解」が大切になるだろう。一人一人の「人間力」が試されていると言ってもいい。

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